毎年寒くなると、「インフルエンザ」という言葉があちこちで聞かれるようになります。
「こないだインフルエンザにかかってえらい目におおたで」
「そーか、ところでインフルエンザって何なん?風邪とどう違うん?」
「風邪のきついヤツみたいなもんやなあ」
てな具合であります。
まあ、どんな病気でもですが、インフルエンザほどの知名度がある病気でさえ、
なかなか正確な情報が伝わっているとはいえないのが現状であります。
そこでこのたび、当院では少しでもインフルエンザの正しい知識を知っていただきたいと思い、よくある質問に対するQ&Aを中心に、解説したいと思います。
平成19年10月作成
西大津耳鼻咽喉科
◆インフルエンザの流行◆
Qインフルエンザは昔からあるの?
インフルエンザは昔から知られている病気です。時には大流行をおこし、1918年に発生したスペイン風邪と呼ばれるインフルエンザの大流行は有名で、全世界で2,000万人以上の人が亡くなり、日本でも30万人ほど亡くなったと言われています。また、1957年に香港で流行がはじまったアジアかぜは日本でも5,000人以上の人が亡くなりました。
Qインフルエンザはいつ流行しますか?
インフルエンザは冷たくて乾燥した空気を好むため、流行はほとんど冬です。
ただし、年によって流行のピークはさまざまです。そして、A型が主流の年もあれば、B型が主流の年もあります。先シーズンはAB混合型で、ピークは遅く3月の上旬〜中旬にかけてでした。2年前は1月中旬にピークがあり、B型の流行はほとんど見られませんでした。
Qインフルエンザはどのように人から人へうつるの?
インフルエンザはのどや気管に引っ付いて、増殖をくりかえし、24時間の潜伏期間を経て発症します。増殖したウイルスは咳やくしゃみで飛び出す細かい霧状のつば(飛沫という)が空気中を漂って、ほかの人の口や鼻から吸い込まれてうつります。いわゆる飛沫感染です。これはインフルエンザのウイルスが、勝手に空気中を飛びまわっているのではありません。あくまでも飛び散った細かい唾に乗って運ばれているだけです。
ですから、マスクをするということが、“うつさない”“うつらない”ための双方向の重要な予防になるわけです。
よだん
ヒトのインフルエンザは気道のみで増殖するため飛沫感染ですが、昨今話題にのぼる鳥インフルエンザは人のとはまったく違って腸管で増殖します。よって糞便感染により伝播します。鳥のフンで広がるわけですね。
◆インフルエンザの予防接種◆
Q予防接種のワクチンはどんなタイプのインフルエンザにも効くの?
現在国内で使われているワクチンは、A型、B型の混合型ワクチンで、毎年、流行型を予測して作られています。詳しい話をすると、A型にはH3N2型とH1N1型の2種類があってA/H3N2型、A/H1N1型、B型の3つのタイプのウイルスそれぞれの株を選定して作られます。ですから、今年のワクチンと、去年のワクチンは違うわけです(ちなみに4年前と5年前のワクチンはたまたま流行型が同型と予測されたため一緒だった)。
ちなみに
今年のインフルエンザワクチンの製造株は
A/ソロモン諸島/3/2006(H1N1) A/広島/52/2005(H3N2) B/マレーシア/2506/2004
なんだそうです。去年との変更点は(H1N1)株のみでした。
よく、「おたくのワクチンはA型用ですか?B型用ですか?」と聞かれることがありますが、どちらが流行しても効果が出るようになっています。また、その年に販売されているワクチンはどの製薬会社で作られるものも、同じ株を選択しているので日本全国どこで受けても変らないということです。
ですから「○○医院のワクチンはよく効くらしい」とか「××病院で打ってもらっても効かない」なんてことはタチの悪いうわさで、実際にはありえないことです。もっともワクチンを水で薄めているようなトンデモ医院があれば別でしょうけどww。
Q接種してからどのくらい効果が持続するのですか?
論文や研究者によってさまざまな意見がありますが、3〜5ヶ月は持続するようです。
また、接種したその日から効くのではなく、抗体がしっかりしてくるまでは2週間ほどかかります。このあたりを参考にいつ摂取するべきかを考えればいいわけです。
というわけで次の質問につながります。
Q接種時期はいつごろがよいのでしょう?
接種時期については、最近5年間の流行ピークと今年の気候から考えて当院では11月〜12月中をお勧めしています。お子様の場合、2度目がありますので、1回目の接種を12月中旬までには済ませておきたいです。11月に打てば3月いっぱいくらいまでは充分にカバーできる計算です。
Q子供はなぜ2回接種が必要なの?
13歳未満の小児に対しては原則的に2回接種が必要です。子供は1回の接種で抗体の出来る確率が低いからです。2回接種することでその確率はぐんと上がります。これは不活化ワクチンの限界ともいえますが、その分、副作用も少ないのが特徴です。安全志向の日本人向きと言えるのではないでしょうか。
ちなみに大人も2度接種すればより、確実な効果が得られるといわれています。
1回目と2回目の間隔は4週間がベストといわれています。諸事情により、前後せざるを得ないときもあるとは思いますが、3〜4週間ぐらいと思っておいて予定してください。
Q乳児の接種は必要ですか?
生後半年以内の乳児に対する接種は、あまり意味がないといわれています。まだ母胎由来の免疫が残っているためだと思われますが、抗体がつきにくく、しかもあまり重症化する子も少ないようです。
むしろ、周りの大人や、兄妹がインフルエンザにかからないよう留意することが大切なのではないでしょうか。
Q予防接種が原因でインフルエンザにかかってしまうことがあるの?
絶対に有り得ません!日本では。我が国で承認されているのは、ウイルスの成分でつくられた不活化ワクチンというもので感染力はありません。
「おたくで予防接種してもろた日いから、熱でてインフルエンザになりましたわ」といわれる方が毎年何名か居られますが、これは接種する数日前にかかっていて、たまたま接種日に発症しただけでしょう。不活化ワクチンでインフルエンザになってしまうことは医学的に不可能です。ただし、アメリカなどで承認されている生ワクチンなら有り得ることです。
Q予防接種したのにインフルエンザにかかってしまいました?
ワクチンを接種したのにインフルエンザにかかってしまうことはあります。残念ながらワクチンを接種したからといって100%効くとは言い切れないのです。これも安全性に優れた不活化ワクチンのデメリットだけど。
ただし、予防接種を受けていると、万一かかっても症状が軽くすむ(これ大事!)ことは統計的にも認められています。診察していても、予防接種してなくてインフルエンザにかかってこられた人はマジしんどそうです。そういう意味においても、予防接種を受けておく必要性はあると思います。
Q予防接種による合併症・副作用はありますか?
ワクチンを接種したことによって起こる副作用の報告はほとんどが接種部位(注射したところ)が赤く腫れたり、かゆみがでたりといたことです。これは数日で回復し、重篤な後遺症が残るものはほとんど報告されておりません(結構腕がパンパンに腫れることもあるけど2〜3日でひきますよ)。
極々稀に全身性の副反応として、アナフェラキシーショックやギランバレーの報告例があるそうですが、国内の最も大きな研究機関の数万人対象の調査でも把握できないほど珍しいケースであるようです。
つまり、インフルエンザの予防接種はかなり安全な部類の医療だと言ってよいと考えます。
Q妊婦や授乳婦はうけられますか?
妊婦さんは原則、受けられません。それは胎児への安全性が確認できていないからです。(妊婦さんを使って人体実験できませんよね)
授乳婦に関しては受けていただいております。1歳未満の乳児も受けることが出来ます。
◆インフルエンザの検査◆
Qインフルエンザかどうか調べることが出来ますか?
出来ます。最近では、鼻水を材料に外来でインスタント検査を行っております。
鼻水を採取した後、約15分で判定が出来ます。A型、B型の判定も可能です。
インフルエンザかどうか知っておくことは大切です。治療法がより絞り込めると同時に、自覚をもって、人に移さないよう注意を払うように出来るからです。
ちなみに
インフルエンザの検査に使う鼻水は、鼻と喉のちょうど間、上咽頭という部位から採取するのがベストです。鼻の穴から綿棒を15cmほどいれて鼻汁をぬぐいます。鼻の構造を理解していない医者がするとこれが結構痛い!(血もでたり)。 その点、耳鼻咽喉科の医者は、お手の物です。
ホント下手なのがやるといたいよ〜お。

B型のインフルエンザが検出された様子
◆インフルエンザの治療◆
Qタミフル以外にも薬はあるのですか?
抗インフルエンザ薬には、代表的なものとして、タミフル、リレンザ、アマンタジンの3つがよく知られています。タミフル、リレンザはA型、B型両方に効きますが、アマンタジンはA型のみに効果があります。
ご存知の通り、タミフルは昨年の副作用問題で、安易には使いにくい状況になっています。
リレンザ、アマンタジンに関してはいまのところ異常行動の報告はありません。
Qインフルエンザにかかったら抗インフルエンザ薬を飲まなければならないのでしょうか?
抗インフルエンザ薬は絶対に必要なわけではありません。数年前まではインフルエンザの治療は基本的に対症療法とされていました(熱や炎症を下げる治療や、合併症に対する治療)。実際、日本以外ではまだその考えです。日本の医療機関が、インフルエンザ⇒即タミフルと、安易に処方しすぎているのは確かであり、反省すべき部分はあると思います。しかし、実際、インフルエンザで死亡する人(もちろん子供も含め)が少なからずいるという現実をみると、出来うる最善の治療を提供するべきであり、抗インフルエンザ薬を使用するかどうか、的確な判断を下すことが我々医療人の使命だと考えています。
ぜひ読んで
タミフルに関する一連の報道を鵜呑みにするのだけはやめましょう。マスコミは決して真実を報道する機関ではありません(特に朝日新聞は要注意!)。
興味のある方は覗いてみてください。参考になるページです。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~SuzunokiCC/tamihuru.html
とにかく、インフルエンザに負けない体を作る!うがい手洗いを励行し、ウイルスの進入を防ぐ。旨いものを食い、よく寝る。そして病は気から!
前を向いて突っ走ってる人はビョーキにはなりません!
Qインフルエンザの診断が出て、抗生物質が出ました。これっていいの?
インフルエンザに対して抗生物質は基本的に無効であります。しかし、インフルエンザと診断されて抗生物質をも出されることがしばしばあります。
私自身もかなり、処方することがあります。これは、インフルエンザに続発的に合併する疾患に対応するためなのです。
医院で診療していると7割ほどの人は、細菌感染症を合併してきます。
たとえばインフルエンザでは黄緑色の鼻は出ません。
でも、インフルエンザにかかって黄緑色の鼻水が出てきた!?
これは細菌性の急性副鼻腔炎(いわゆる急性ちくのう症)を併発しているからです。
このようなときには抗生物質の服用が必要であります。
Qインフルエンザに解熱剤は使ってはいけない?
インフルエンザに対して解熱鎮痛薬を使用するときは、注意を要します。特に小児に関してはインフルエンザ脳症になったときに問題が生じます。
ただし、アセトアミノフェンという安全が確認された解熱鎮痛薬がありますので当院でも積極的に使用しています。
「インフルエンザの熱は下げてはいけない」ということはないと思います。
◆その他、インフルエンザの話題◆
Q鳥インフルエンザは人にもうつるのですか?
鳥インフルエンザの中で数種類のものが人に感染したと報告されています。
その中でも高病原性として名高いA(H5N1)は人の死亡例もあり危険なウイルスです。
ただし、鳥インフルエンザが人から人へ感染した報告例はまだありません。
Q新型インフルエンザが流行したら大変なことになる?
みんなが一番心配ているのがこのことです。新しいウイルスが現れ人から人へと感染してゆくとえらいことになります。
冒頭の項でみたスペイン風邪やアジア風邪のように世界中で多くの犠牲者が出てもおかしくありません。
今、関係者が注目し、恐れているのが、前項で話した鳥インフルエンザA(H5N1)がもし、人から人へ感染するようになったら、ということです。
尋常ではない病原性を持ったA(H5N1)が強い感染力を獲得し、蔓延したらとんでもないことになります。
トピック
少々難しい話になりますが、現在予防接種で使用されているインフルエンザワクチンはIgG抗体というものを作り、インフルエンザの進入に備えます。
インフルエンザは人の口や鼻から進入し、気道粘膜(咽頭や気管の粘膜のこと)において増殖します。この気道粘膜において迎撃したいところなのですが、前述のIgG抗体は残念なことに粘膜面にはないのです。
つまり、いちばん攻撃したいところに攻撃するアイテムがない、という悔しい状態なのです。
そんなわけで、今、最新の研究として、IgA抗体を作るワクチンの開発が進められています。
IgAはIgGとちがって、粘膜面の免疫を専門としているので、インフルエンザウイルスが口や鼻から進入し、さあこれから増殖するぞ、というところに打撃を与えることが出来るのです。
ですから、この研究が進みインフルエンザのIgA抗体が開発されれば、すごく強力な予防効果が期待されるわけです。


西大津耳鼻咽喉科